Project
家族の時間もはたらく時間も
大切にできる幸せ。
男性育休
積水ハウスは、子育てを応援する社会を先導する「キッズ・ファースト企業」として、2018年9月より「男性社員1ヶ月以上の育児休業完全取得」を推進しています。最初の1ヵ月は有給とし、業務との調整を図りやすいよう、最大で4分割での取得も可能に。さらに、2021年4月から、配偶者の産後8週間以内は1日単位で自由に取れるように変更し、より柔軟に使える「男性育休」として進化しました。2019年2月の本格運用開始以降、取得率100%を継続しています。
プロジェクトメンバー
ダイバーシティ推進部の先輩 1998年入社
人事総務部の先輩 2001年入社
ITデザイン部の先輩 2015年入社
男性も育休を取得できる。
そんな当たり前の幸せを
実現したい。
当社の男性育休のきっかけは、社長が出張先のスウェーデンで見た光景でした。街でベビーカーを押す親のほとんどが父親だったことに驚き、現地の方に聞いてみると「スウェーデンでは男性が3ヶ月の育休を取るのが当たり前のこと」という答えが返ってきたそうなんです。社長は育児に携わる男性たちの幸せそうな姿がとても印象に残り、積水ハウスでもぜひやりたいと、帰国してすぐ、男性育休の推進を経営戦略として打ち出しました。
積水ハウスは“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバル・ビジョンを掲げていますが、その目標を実現するためにはまず、社員とその家族が幸せでなければならないと考えているんです。男性育休は、その第一歩となるプロジェクトでもあります。
誰もが気兼ねなく取得するために、
できることには全て取り組みました。
男性の育休取得率向上が方針として決まってから最初に声が掛かったのが、ダイバーシティ推進部と人事総務部でした。新たな男性育休のあり方をできるだけ早く実現させたい思いがあったので、部署同士で最大限連携を取りながら、まずはダイバーシティ推進部のほうで大きな方針決めと各事業部へのヒアリングを担当いただきました。
それ以前にも男性の育休制度はありましたが、その当時の平均取得日数は2日。「スウェーデンのような3ヶ月の育児休業なんて本当にできるのか?」という声も多く上がりました。そこで各事業部と相談を重ねながら、最終的に1ヶ月という期間を目指すことになったんです。
ダイバーシティ推進部がヒアリングした内容を受けて、今度は人事総務部で実際の制度や運用を確定するために奔走しました。1ヶ月を4分割できる仕組みをつくったり、1ヶ月は完全に有給にして評価にもまったく影響させないということを社長と確約したりと、誰もが気兼ねなく利用できるようなルールをつくっていきました。
ITデザイン部では、プロジェクトの実運用の部分を担当しました。私たちが担当したのは、社員のみなさんが制度を使いやすくするための、ユーザビリティの改善とデータの取得です。具体的には、社内の勤態システムを改善し、それまでエクセルや紙でつくっていた育休の計画書や業務調査をシステム上で管理できるようにしたんです。
他にも、取得した社員やご家族へのアンケート、社長からのメッセージ表示なども実装していただきました。漠然とした要望で無茶振りをしてしまうこともあったかもしれませんが、「みんなのためになることだから」と快く対応してくださいました。
このときにはもう、ダイバーシティ推進部、人事総務部、ITデザイン部の3部署がチームとして動いていたので、こちらから要望を渡さなくてもITデザイン部の方で発案から実装までを自主的に担当してくださることもありました。実際にITデザイン部からのアイデアである「2才の誕生日までに取得計画を登録していない社員には勤態システムに通知を出す」というシステムは、取得漏れの防止に大きな効果がありました。
"取れる取れない"の議論は、
もう誰もしていないんです。
完全取得を実現するために、制度が決まったあとは「取れない理由をなくす」という方向性で仕組みを考えていきました。たとえばご家族の方から、「家事育児の分担ができていないまま、夫がただ休むだけでは何も変わらない」という声が上がれば、家事や育児の役割分担を明記する「家族ミーティングシート」を製作したり、マネージメント層の理解が不足していれば、意識改革のためのフォーラムには、取得対象者とその上司のペア参加を必須にしたりと、さまざま対策を増やしていったんです。
社長が経営戦略として自ら声をあげていたこともあるので、意識改革については他の企業よりも進めやすかったのではないでしょうか。そもそも「取れるか取れないか」という段階の議論はまったく無くて、「どのようにすればさらに取りやすくなるか」という課題改善に向けて、事業所ごとにそれぞれ取り組んでいただいています。
実は私自身、来月の育休取得に向けていま準備をしている真っ最中なのですが、取得が決まった時点で希望した期間はすべて休みを取る前提でスムーズにほか業務との調整が始まっています。この5年間で醸成された育休取得に対する積極的な雰囲気を肌で感じ、担当者としてもうれしく感じますね。
"自分の家族を大切にする人から、家を買いたい"
そんな声もいただきました。
そうやって男性育休が社内に浸透するようになると、続々と感想が届くようになりました。たとえば社員からは、育休を取ることで「ママしかダメだった寝かしつけが、パパでも大丈夫になった」という声や、育休を取ることでようやく家事や育児の大変さ、そして妻の負担を理解できるようになったという声も届いています。
もちろん業務面にもいい影響が出ています。事業所の営業担当からは、家事・育児に対する理解度が増したことで、家庭を持つお客様への共感力や提案力が上がり、業務に直結したとの声がありました。またありがたいことに、営業担当の社員が育休取得の際にご迷惑をおかけする旨をお客様へお伝えした際に「家族を大切にする人から家を買いたいので、迷惑なんてとんでもない。」と言っていただいたこともあるんです。
本当に稀な例ですが、この男性育休について取材を受けた社員が地方の新聞に掲載されたとき「今朝の新聞に載っていた人に賃貸住宅を建ててもらいたい」と地元の事業所まで電話をいただいたこともありました。
採用面でも、面接に同席した際にはみなさんとても関心を持っていただいていますね。男性はご自身の将来に関わることなのでもちろんですが、女性の方からも「男性が当たり前に育児する風土の会社で働きたい」と言っていただけます。
日本でも男性の育児休業取得が
当たり前になる社会を目指して
2018年にスタートした当社の男性育休は、他企業より少し先行して取り組みを進めていました。そこで、男性育休について、社会とともに考えていくきっかけをつくりたいという想いから、9月19日を「育休を考える日」として記念日制定し、2019年から毎年フォーラムを開催しています。
私たちがこのプロジェクトをはじめた当初に比べると、法改正があったこともあり男性育休に積極的な企業は格段に増えましたが、まだまだ社内周知や経営層の説得という点に苦しむ企業も多いのが現実です。積水ハウスがフォーラムを開催し、メリットや仕組みについて発信することで、そうした悩みを持つ企業担当者が社内の制度改正を推進しやすくなるというのも狙いのひとつです。実際この5年間で、企業の育児休業に対する意識が大きく変わってきていると感じますね。
誰もが幸せに働ける会社を目指して、
さらに多様な制度も進めていきます。
育児休業の取得率は100%を継続していますが、私たちはここがゴールとは考えていません。働き方の多様性を大切にする企業として、今後は育児に限らずさまざまな背景を持つ社員が働きやすい環境をつくっていく必要があります。
実際に2023年8月からは、その一歩として新しい休暇制度がスタートすることになりました。たとえば海外留学や社員の資格取得、新たな学びを支援するための「キャリア自律休業」、介護や育児休業だけではカバーできない子どもの病気や不登校といった事情に寄り添うための「子どもサポート休業」、そして働きながら大学へ進学することを支援する「高度学習支援制度」などがありますね。
ちなみにこの新しくできた制度は、社員自身が自発的に発案し実現したものです。積水ハウスは一人ひとりが声を上げる環境があり、会社が同じ方向を見つめ、支えていく土壌が育っています。男性育休を起点に今後はますます、多様性に溢れる働き方が大切にされる会社に成長していくと思います。
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