Project
人間と生きもの
どっちにとっても心地よい
暮らしをつくる幸せ。
「5本の樹」計画
「5本の樹」計画は、"3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を"という思いを込め、気候風土に合わせた地域区分を設け、それぞれに適した樹木を植える庭づくり・まちづくりの取り組みです。地域に適した植物をお庭に植えることで、鳥や蝶など様々な生きものたちが喜んで集まる「住まいの中の小さな自然」がつくられていき、やがてわが家の庭そのものが地域の生態系の一員として豊かな環境づくりに寄与する存在となります。
プロジェクトメンバー
環境推進部の先輩 2008年入社
戸建商品開発部の先輩 1995年入社
調達部の先輩 1984年入社
3本は鳥のため、2本は蝶のため。
でも実は人の幸せにもつながっています。
私たちの関わっている「5本の樹」計画は生物多様性の保全が大きな目的ですが、その活動は人の幸せにもつながっています。
例えば庭に在来種の樹があると、朝は鳥の鳴き声とともに目覚めたり、木漏れ日のなかで樹々のぬくもりを感じることができます。そうした情景には、自然と親しみながら暮らすことそのものの魅力がありますよね。「5本の樹」計画は、そうした人間の暮らしの豊かさに直結しています。
まずは、植物を"生きもの"として考えてもらいます。
「5本の樹」計画を最初からお客様に理解していただくことは簡単ではありません。
「樹のお手入れは大変そう」「虫が苦手で樹を植えたくない」などの理由から、庭に樹を植えることに抵抗のあるお客様もいらっしゃいます。
そんなとき、まずは「植物はペットと同じ、生きものとして考えください」とお伝えし、植物それぞれの特性などと共に在来種と外来種の違いをご説明します。例えば「ハナミズキ」は花が咲き紅葉もする人気な庭木の1つですが、実は外来種で、うどん粉病にかかりやすいという面もあります。
しかしそれによく似た花を咲かせる「ヤマボウシ」は在来種で、日本の気候に適応しているのでハナミズキと比べると病気にかかりにくく、虫もつきにくい。このようなお話を一つ一つ重ねることで、徐々に“在来種のいいところ“に気付いていただける事が多いです。
また、当社では「経年美化」という考えをお客様にお伝えするようにしています。エクステリアの人工物だけではなく、自然物の樹が庭にあると時間が経つにつれ美しく成長し、多くの表情を見せてくれます。「5本の樹」計画は自然への貢献だけでなく、住まいの景観を彩ることにも適しているのです。
また戸建ての住宅だけでなく、分譲地や賃貸住宅でも力を入れています。「5本の樹」を取り入れることで街並みが良くなり、地域の人々にも喜ばれ、その地域の生きものの住みかも増える。結果的に一石二鳥、三鳥にもなると思います。
緑の話をすると、お客様も私たちも、
思わず表情がやわらぎますね。
「5本の樹」計画で印象的だったのは、最初は樹が嫌いだと言っていたご主人が、いざ植樹をしたら家族の誰よりも熱中し 、今では水やりや剪定をすすんで行っているというエピソードですね。
他にも、庭に蝶がよく訪れるようになり、興味を持った娘さんがわが家の「蝶博士」になったというお話、家庭菜園やガーデンパーティーなど「庭でこんな楽しいことをしています」というお話をいただくと、お客様が緑とともに暮らす幸せそうな様子が伝わってきます。
緑の話をするとお客様の表情がやわらぐという話はよく聞きます。住宅の契約前の打合せとなるとどうしても話が固くなってしまいがちなので、例えば「この地域だとこんな鳥がやってきますよ」「(お客さまの庭にある樹を見て)よくお手入れされた樹ですね。シジュウカラも呼べる樹なので残してはいかがですか」などとお話しすることがあります。
すると、お客様の方からも思い入れのある樹のお話などをしていただけるんですね。緑を通してお客様との深いコミュニケーションにつながり、結果的に他社との差別化にも貢献できているんじゃないかなと思います。
戸建て住宅のお客様だけでなく、賃貸住宅のオーナー様からも「『5本の樹』計画を取り入れた結果、景観が良くなった」とのお声をいただいています。
最初は建設に反対していたご近所の方も、緑豊かに出来上がった賃貸住宅を見て「街並みが良くなってうれしい」と言われたそうです。住宅の庭だけでなく、街全体にまで笑顔を届けられることは嬉しいですね。
植木業界にも希望を与えられるプロジェクトでありたい。
このプロジェクトを通じ、造園や園芸など植木業界の問題点も見えてきました。生産や流通業者の数が年々減ってきてしまっているのです。公共工事が減っていることや、数日で覚えられる簡単でやりがいに欠ける仕事といったイメージがあることで、後継者が生まれにくくなっています。そこを「5本の樹」計画で少しでも元気づけられたらと思います。
お客様や地域の幸せをつくりながら、環境にも貢献でき、実は奥の深い仕事であることを広めれば、若い方にも関心を持っていただけるのではないでしょうか?植木業界の仕事が、より一層誇りに思えるように、このプロジェクトで貢献したいと思います。
確かにそうですね、実は私自身、実家は造園業を営んでおり、小さいころから草むしりやブロック積みの手伝いなどをしていました。家業を継ぐことも考えていましたが、造園の知識も活かしながら建築にも携われることに魅力を感じ、積水ハウスに入社を決めました。
造園業は後継者不足が深刻ですが、住まいや建築が融合していくことで、関心を持ってくれる人がもっと増えるのではないかと考えています。
"5本の樹"が世界のスタンダードになったらいいなと思います。
「5本の樹」計画は2001年からスタートし、「5本の樹」を含む累計植栽本数はこれまでに約1,900万本に達しました。
「5本の樹」計画の効果は「ネイチャー・ポジティブ方法論」として2021年に公開されています。
これは「生物多様性保全効果の定量化」に成功した世界初の画期的な取り組みで、「5本の樹」計画を行った場合と行わなかった場合を比較した結果、住宅地に呼び込める可能性のある鳥の種類が2倍、蝶の種類が5倍になることがわかりました。日々の積み重ねの結果が成果として見えると手応えを感じますよね。
今後のさらなる野望としては、今のプロジェクトを世界に広げていくことです。アメリカの「5本の樹」、オーストラリアの「5本の樹」など、実現させたいです。
何年先になるかわかりませんが、世界のスタンダードになったらいいなと思います。また単に樹を増やすのではなく、建築と造園の融合をめざしていきたいですね。
個人的には、樹木を取り巻く業界をもっと元気にしていきたいです。植木業界は、現在新しい人、若い人がなかなか入りません。しかし魅力のある業界にしていけば人は必ず集まります。どうやって魅力のあるものにするか、さらなる勉強を重ねて業界全体を元気にしていきたいです。
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